アメリカで心理学を学び、カナダで東洋医学の専門家に(峯崎 由紀さん)

お話を聞いた人:認定中医師、鍼灸師 峯崎 由紀さん
中国の伝統医学である中医学を実践する専門家としてトロントのサロンに勤務し、鍼灸や漢方による治療を行う。現地のメディアでもコラムを執筆するなど、中医学と心理学をベースにした深い知識で、人々の心や体、生活の質を上げる情報提供やワークショップなども行う。

日本にいた頃はどんな事を?

もともとは薬剤師の母の影響で、小さい頃から医者になる事を目指して、医学部を受験していたんです。

でも、面接で「途中で辞めてしまうから、女性の医者は正直必要ない」と、言われる事も多かったですね。20年前の当時はそういう時代だったんです。面接官は、そのくらいの覚悟で、女性として医師の仕事をやれるかどうかを聞いていたんだと思います。そういった職種の厳しさや、私の勉強不足もあって、結局、医者の道は断念しました。

そこで、その時に受験できる4年制大学を受験してひとまず環境科学部に進学しました。卒業後は、父のアドバイスで、アメリカの大学の3年生に編入することになり、アメリカのヴァージニア州に行きました。

アメリカの大学での専攻は?

この大学にきて、ずっとやりたかった心理学を専攻しました。医師を目指していた当時からも、精神医学に興味を持っていたんです。

小さな女子大で、他国からの留学生の受け入れ体制も整っていたので、そこで寮生活をしながら学びました。

アメリカに来た時には1ヶ月ほど語学研修を受けたんですが、当時は本当に全然英語ができなくて。あんなに受験勉強で英語を学んだのに、こんなに役に立たないものかと、かなり衝撃を受けましたね(笑)

学校でも、他の国の留学生が、文法はめちゃくちゃなんだけど、それでも一生懸命喋って、それがちゃんと相手に通じているのを見て、本当に驚いたのを覚えています(笑)

英語での授業も大変でしたか?

本当に大変でした。1ヶ月の語学研修を受けたものの、いきなり心理学の専門用語の英語で授業があるので、最初は何を言ってるのかさっぱり(笑)

読まなければいけない資料や書籍もあって、1つの授業分だけで40ページあったり。1ページ読むだけでも何十分もかかっていたんです。最初の一年目はそんな感じで、英語と格闘しながら大学生活を送っていました。

英語が伸びてきたなと思ったのは、夏休みや冬休み期間にやっていたボランティアです。フロリダで病気の子供たちとその家族が、遊園地で休暇を過ごすためのお手伝いをするんですが、いろんな人達と交流をすることで、英語が伸びたと思います。

卒業後は大学院に進学を?

そうです。ニューヨークの大学の大学院に進みました。そこに私が師事したい産業組織心理学を専門にする教授がいらっしゃったんです。

その大学院で、働く人のメンタルヘルスケアについて学びたかったんですが、ちょうど入学する頃にその教授が臨床心理に移動されたり、大学院での勉強内容も私が希望していた内容とズレがあったりして、そこでの勉強を断念する事にしました。

そのまま心理学研究の道に進みたかったんですが、やはり外国人がアメリカの大学院で学ぶには、とてもお金もかかります。希望しない勉強内容にそこまで費やす価値はないなと判断しました。

その後カナダへはワーホリで?

はい。今の夫となるパートナーが当時カナダに住んでいたので、その縁でカナダへワーホリビザで来ました。

トロント郊外の都市に住んでいたのですが、そこの雇用サービスセンターに、産業心理カウンセラーのアシスタントとして就職し、1年ほどワーホリのビザで働きました。でも当時のカナダ政権は移民に厳しい政策をとっていたので、外国人の雇用は今よりもだいぶ難しく、続けて働くための就労ビザが下りませんでした。

そんなタイミングで、中医学がオンタリオ州でも国家資格として取得できるというニュースをたまたま見つけました。それに興味を持って、学生ビザを取ってカナダに残り、中医学を学ぶ学校に通う事にしたんです。

中医学にはもともと興味を?

母は漢方医もやっていたので、もともと親しみやすい分野だったんですよ。特に、東洋医学は、心と体の繋がりにも注目するので、それが私が心理学を学んできた部分ともつながるところがあったりして、しっくり来たんです。

右往左往しながら進んできましたが、小さい頃から母を通してずっと慣れ親しんだ中医学という分野に落ち着くとは、なんだか不思議だなと思います。

そうしてカナダで中医学を学ぶ学校に通って勉強しながら、結婚と出産、子育てをして、国家試験を受けて中医師資格を取得しました。

今は、トロントで漢方や鍼灸を中心にいろんな方の心身のケアをさせていただいています。

英語の勉強に関してアドバイスは?

まずは英語を話すためのメンタリティをつける事ですね。カナダはそういう意味で、英語が上手ではない人に対しても寛容なので、最初にそういったメンタリティを築くための場所として、留学に向いているかもしれません。

私はシャイで積極的にどんどん人に話しかけるタイプではないんです。でも、こちらに住む移民の方たちは、めちゃくちゃな発音でも自信満々に自分の言いたい事を伝えてきます(笑)そういった他の移民の人々の姿をみて、ちょっと間違った英語くらいでは気にしないメンタリティがついたと思います。

学生の頃は、お天気ニュースやシットコムのドラマを英語字幕付きで見て、そこで得た英語の表現を使っていったりしていました。そういう普段の生活の中での英語の勉強もいいですよ。

キャリア作りのアドバイスを。

私はずっと勉強をつづけてきて一貫性は全然ないんですが、それでも過去に学んだ事のすべてがいまの仕事に生かされているなと思います。

本当にやりたい事なんて、そう簡単にすぐに見つかったりしないと思うんです。だから、今とりあえず目の前にある出来る事をやってみるのが一番いいと思います。

日本だと大学を卒業したら新卒入社して、ずっと働くイメージがありますが、こちらでは社会人を経験して、また大学やカレッジへ行って勉強しなおしてキャリアチェンジするのは、ごく普通の事なんです。

何歳になっても、いつでも新しい事にチャレンジできます。まずはなんでもやってみていろんな経験を増やしていくといいと思いますよ。

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