お話を聞いた人:
寿司レストラングループAburi 創業・経営 中村正剛さん
北米屈指の人気日本食レストランMIKUを始めとする、日本食レストランAburiグループ経営。ハリウッドセレブが足繁く通う日本食レストランをバンクーバー、トロントに数々オープン。海外に炙り寿司人気を起こした仕掛け人。
日本ではどんな事を?
元々は宮崎の実家が寿司屋を営んでおり、親の後を継いで、ビジネス形態を回転寿司店に変え、九州南部を中心に8つの店舗を経営していました。
おかげさまで会社は順調に拡大していましたが、実はその前から、将来日本のマーケット規模が下がっていくことに不安を感じており、「いずれは世界に」と思っていたんです。
海外出店のきっかけは?
知人の紹介でバンクーバーの日本食レストランの視察に来たんですが、その時にすっかりバンクーバーに魅了されました。ただその時は、さすがに東京進出もしていないのにいきなりバンクーバーは無理だろうと思ったんです。でも日本に帰ってしばらくたったある日「よし、やろう!」と思ったんですよね。具体的な理由とかなくて本当にいきなり決断したんです。
英語の勉強は?
当時もいきなり決めたので、英語は全くでした。今でも完璧というほどではないです。海外でやると決めてからは、一気に走り始めて、英語もやりながら勉強したんです。物件探しでも不動産屋さんでは門前払いばかりで取り合ってくれず、紹介されるのはあまり良くない条件ばかりで。結局一年間も物件を探しつづけました。
海外で成功させる確信はあった?
当時、日本のお店で商品開発した「炙り寿司」が非常に人気で、海外でお店を出す前から「うちの炙り寿司は海外でいける!」という確信があったのです。炙りには「イノベーション」という意味があります。素材に火を入れて調理すると、新しく価値あるものに変わっていく。そうして海外で新しいお寿司の形を提案しました。
成功の要因は?
「日本のものを海外の方に受け入れてもらえるように工夫する」ことこそ、まさに私たちが海外で成功した一番の要因だと思っています。
出店当時、日本食はすでに定着していて、バンクーバーには400店を超える寿司屋がありました。その競争の激しい中、私たちが目指すところは、「日本のお寿司をそのまま押し付けるように提供することではない」と思ってい
ました。
海外で受け入れられるには?
当時、外国に移民した日本人のエッセイをたまたまラジオで聴いたのです。そのエッセイで、「移民するということは、自国の文化や習慣をもって、その国がより良くなっていくことに寄与貢献すること」とおっしゃっていて。
まさに「これだ!」と思いました。日本人として誇りを持ちつつ、その国の現地の人のために、良いものを提供することだと思います。
日本人の可能性とは?
私たちは現地のカナダ人も多く採用しているのでよくわかりますが、例えば手先の器用さなど、日本人のパフォーマンスはカナダ人の3倍はあると思います。また、カナダ人はメジャーリーガーというか、チームではなく個人の成績だけを気にするところがあり、そこを教育することに苦労しています。一方、日本人はチームを大事にする方が多い。
それは日本人の強みだと思います。
海外で働きたい方へメッセージを。
「知らない」ということは最大のロスだと思います。まず、日本の外にはチャンスがたくさんあるという現実を知って欲しいです。まずはやってみる。もしだめならまた戻ってもいいじゃないですか。興味があれば、まず一歩踏み出してみましょう。私自身もその一歩を踏み出したからこそ今があります。その方が絶対におもしろい人生になりますよ。