お話を聞いた人:
フロント・エンジニア 五十嵐めぐみさん
バンクーバーのビザコンサルティング企業で働きながら大学の勉強と同時に、独学でプログラミングを習得。知人のWebサイト構築で実績をつくり、エントリーレベルでエンジニアとして、スタートアップ企業に転職。
海外に出たきっかけは?
地元を出て、京都で大学生をしていたんですが、アルバイト先の先輩が、フットワーク軽く海外に行く姿をみて、刺激を受けたのがきっかけです。
私自身はそこまで海外志向タイプではなかったんですが、もともとずっと同じ場所に住んでいる事に疑問はあったんです。
海外の大学と比べると、日本の大学は単位を取ることは簡単です。もちろん大学や学部にもよりますが、私の場合は、授業に出席していなくても卒業に必要な単位を取ることは可能だったんです。なので、高い家賃を払ってまで大学の近くに住まなくても、どこにいてもいいんじゃないかな、ってずっと思っていて。
そこでまずは留学を?
はい、3年生になった時に、ゼミの先生に相談して、出席ではなくレポートを出す形で単位をもらうようにしていただいて、3ヶ月間フィリピンへ語学留学しました。その他の履修していた講義も、帰ってきてから勉強して試験を受けて。
その留学から帰った後、大学3年の後半から1年間休学して、ワーホリでカナダのバンクーバーに来ました。
アメリカやイギリス、オーストラリアなどその他の国も検討はしましたが、働けるビザの取得のしやすさや渡航のタイミング、治安や英語の聞き取りやすさなどを検討して、カナダに来ることに決めました。
カナダに来てどんな事を?
最初の2ヶ月くらいは働かずに、語学学校に行ったりしていたんですが、せっかくの貴重なワーホリビザを無駄にするのはもったいない、と知人に助言されて、自分なりにレジュメ(履歴書)を作って、バンクーバーのダウンタウンのいろんなお店に配ってまわりました。
その中の1軒で、フランス洋菓子屋さんに採用されました。当時は「Would you like a receipt?(レシートはご入用ですか?)」と言うこともできない英語レベルだったんですけれど、それでも、完全に英語環境のそのお店で、雇ってもらえることになって、そこで4ヶ月ほど働きました。
転職したのはなぜ?
ずっと立ち仕事なのが、体力的に自分にあわなかったんです。そこでオフィス仕事を探そうと思い、仕事探しをすることにしました。
お店のマネージャーや同僚にも、その事を正直に話したんです。そしたら、レジュメの上手な作り方を教えてくれたり、LinkedinやIndeedのプロフィールを作るのを手伝ってくれたりして。
そこから受付や事務アシスタントなどの仕事にたくさん応募しました。でも、いくら応募しても、何週間経っても、まったく連絡がなくて。最終学歴は高卒だし職歴もないし、英語もままならないという事が、あまりに不利だと改めて気づかされました。
そこで、方法を変えたんですね。
はい、英語環境で働きたくて、それまであえて避けていたんですが、日本語が必要な仕事を探すことにしたんです。
言語でも学歴でも職歴でも他の人に負けてる市場で仕事を探すには、今の私が勝てる日本語力を活かすしかないなって。最初にそこに気付け!って感じなんですけどね(笑)
そこで、日本語のスキルで求人を探したら、面接の連絡をもらえる確率が上がりました。
面接を受けた会社の一つが、現地のビザコンサルティングの会社で、日本の企業向けのビザコンサルティングのために、日本語ができるスタッフを募集していて、そこに採用していただきました。
その会社で就労ビザまで取得を?
そうです。3ヶ月の試用期間を経て、会社から移民する事を視野に入れて、長く働きたいかどうかを聞かれました。事務職とはいえ、ビザの知識を教えてトレーニングするので、会社にとっては、長く働いて欲しいですからね。
正直、その時はそこまでは考えてなかったんですが、せっかくの機会なので永住権を取りたい旨を伝えて、まずは会社から就労ビザを申請してもらい、ワーホリから就労ビザに切り替えて働きつづける事にしました。
その会社でおよそ3年ほど働きました。
日本の大学は?
1年の休学期間が終わってからは、その会社で働きながら、復学して、カナダからリモートで大学の勉強を続けました。特に4年生になると卒業に必要な単位は残り少なくなってきていましたし。
仕事が終わったら勉強して、試験期間中だけ休暇をいただいて帰国して試験を受けるという、2足のわらじ生活を2年ほど送って、無事に単位を取って卒業することができました。
カナダの会社らしく、残業無く働ける環境だったので、そういう生活ができたんじゃないかなと思います。
大学卒業後は、永住権取得を?
大学を卒業すれば、自分が永住権を申請できる条件を満たす事が分かっていたので、大学を卒業してすぐに自分で書類を揃えて永住権を申請しました。実際に永住権を取得したのは、大学卒業して3、4ヶ月後です。
私の場合、ビザコンサルティングの会社に勤めていた事もあり、日々変わるカナダのビザに関する情報や知識は常に入っていたので、スムーズに永住権まで取得できたと思います。
コロナになった事で、永住権申請に必要な点数が落ちたり、遠隔で勉強をしやすくなったりすごくタイミングが良かったと思います。
その後、なぜエンジニアに?
カナダに来た頃にできた友人たちが、たまたまソフトウェアのディベロッパーなどエンジニアの人たちが多かったんです。
そういった人たちの仕事の話を聞いて、スキルを持って働くエンジニアという仕事にとても興味を持ちました。特に、日本と違って、カナダにいると英語以外に2〜3言語も話す人達によく出会います。そうすると、これからの将来、カナダであれ日本であれ、ただ英語を喋る事ができるというだけでは不十分で、他にもなにかスキルが必要だと思ったんです。
そこで大学の勉強が忙しくない時期に、仕事の合間をぬって、自分でプログラミングの勉強をしました。
転職活動はどのように?
ふたたび就職活動をするんですが、これがまたすごく大変で(笑)やはり、エンジニアとしての学歴がないので、何にもない状態では仕事が見つかりません。
そこで、自分のスキルを証明できる実績を作るために、友人たちの会社のWebサービスやWebサイトを開発させてもらったり、スタートアップの会社でインターンとして働かせてもらったりして、実績や仕事の経験を作っていきました。
今はバンクーバーのスタートアップ企業でエントリーレベルのエンジニアとして働いていてさらに経験を積んでいるところです。
実際の仕事探しの方法は?
Linkedinなどいろんな所に出ているエンジニア職の求人に一日30件ほど応募しました。日本と違って、こちらの場合は1件の応募に時間をかけず、とにかくたくさん応募します。特に、エンジニア職は人の動きが激しいので、出ている求人数もかなり多いです。
また出ている求人だけでなく、自分が興味ある企業の人事担当者をLinkedinで見つけて、その人にメッセージを送って、「最初は無給でいいからインターンとして雇って欲しい」と連絡したりしました。でも、今考えると、こちらでは、そういうアピールの方法は、「自分はスキルが無い」と言っている事と同様なので、絶対にやらない方がいいと思いますね。
海外で出たい方へアドバイスを。
私ってしっかりした軸があるタイプではないんですよ。いつも人にすすめられた事やアドバイスに素直に従って、行動してきたと思います。なんでも、まずはとりあえずやってみてきました。
やってみて「あ、上手く行ったな」という事もあるし、「全然自分に合わないな」という事もあります。でもとりあえずやってみる事で、それが自分が好きか、合っているかが分かって、収穫があります。
よく海外に行くには、しっかりした計画や目標が無いと行ってはいけないと思ってる人がいると思いますが、完璧な目標や計画を待っていたら、いつまで経っても、行けないんじゃないかなと思います。まずは海外が合うかどうか、試しに行ってみるというのでも、いいんじゃないかと思いますよ。