銀行員を経て、海外で舞台俳優へ【海外の仕事・就職】

お話を聞いた人:
俳優 安尾絵美さん

プエルトリコ生まれ。日本の大学卒業後銀行勤めを経て、俳優へ。海外の舞台に立つためにカナダ・トロントへ。ミュージカル、舞台を中心に、CM、テレビ、映画、声優として活躍。

なぜ俳優になろうと?

幼稚園の時から人前に出てお遊戯を行うのが好きだったんです。意識し始めたのは、幼少期にクルーズ船のショーを見た時で、その時の高揚感が忘れられませんでした。その後も中学校の演劇部で初めて舞台に立った時、高校生になって劇団四季を見た時など、舞台に触れる度にこれが好きだ!と確信に変わっていって。

高校卒業後に俳優の道へ進む事も考えましたが、親を安心させるためにも(笑)大学に進学しました。在学中にオーディションを受けて、お芝居やミュージカルに出演したり、夜間にミュージカルの学校に通ったりして舞台に立つ経験を積んでいきました。

大学卒業後は?

俳優という道を進む事も考えましたが、銀行に就職しました。日本には新卒採用という仕組みがあるので、その時にまず先に、一般の社会人として働く経験を積んでおこうと思って。その後に俳優業に進んでも遅くはないですし。

そこで営業とファイナンシャルプランナーとして3年ほど勤めていました。その仕事も本当に楽しかったです。でもその時に舞台の世界から離れてみて、日本では普通の人にはミュージカルって縁遠いものなんだなと改めて知りましたね(笑)

働きながらも、やっぱりお芝居への情熱は強かったので、週末にレッスンを受けてお芝居のお稽古は続けていました。

海外へ出たのは?

幼少期を海外で過ごした影響か、自分が目指したいと思う表現は常に海外の俳優さんの歌や演技だったので、いつか海外にもう一度長期で行ってみたいという漠然とした思いは、もともとあったんです。

銀行を退職後に役者として活動はしていたんですが、役者の生活というのは、主に副業で収入を得つつ、レッスンを受けて自らを磨き、オーディションを受け、受かったら役者業を行う。この繰り返しです。つまり働けるビザさえあれば、どこでも同じ事が可能です。じゃあ、海外でやってみたらどんな変化があるかなと思って日本を出てみようと思いました。

そこでワーホリでカナダへ?

はい、そうです。30代になると役者をやる女性も結婚や年齢を考え出して辞めていく人も増えてきます。そうした環境の日本にちょっと息苦しさもあったりして。そんなときに私の場合は、ワーホリという自由に働ける素晴らしいビザを見つけて(笑)じゃあ、それを使って海外に出てみようと。せっかくのチャンスだから、それを利用して海外の舞台に立つ経験をしてみようと思ったんですよね。

それで、自分の中で「大人の自由研究」と題して気軽な気持ちで来てみました。海外の舞台に立つという目的だけで、その先を何か計画していたわけでないんですが、とりあえずまずは行ってみて考えよう!という感じで来てみました。

カナダに来てまずどんな事を?

まずはインターネットと脚を駆使して、劇場関連団体をリサーチをしました。どんな団体が存在するのか、カナダのシアターアワードを参考にしてみたりして。

最初は全然情報を得られなかったんですが、偶然トロントの劇団が主催するミュージカルサマープログラムを見つけたんです。既にオーディションは終わっていたのですが、一か八かで稽古場所へ行ってみて「日本から来た役者で、ミュージカルがやりたくて来ました。スタッフでも何でもやります!」と伝えたら暖かく迎え入れてくれて、役者としてショーに出ることになりました。

そこから現地の演劇コミュニティに入ることができ、カナダの演劇情報も得やすくなりました。

思い切って飛び込んだ現地で、温かく迎え入れてくれた演劇仲間

その後、カレッジへ?

はい。ワーホリ後にもカナダでもっと演劇を続けたいと思って、英語での演技に慣れるために、カレッジでコースを取ることにしました。ミュージカルを専門とする学校でしたが、映像での演技と声優の基礎も学ぶクラスがありました。初めからどのメディアにもチャレンジする機会があるのは若い俳優にとって、とてもありがたい環境でしたね。

ただ、カナダ政府の方針転換で、カレッジ卒業後に出るはずだった就労ビザがでなくなる事が途中で分かって、もう本当に落ち込みました。今の夫となるパートナーの支えのおかげでなんとか乗り切れましたが一番辛い時期でしたね。

俳優の仕事で日本との違いは?

印象的なのは役者の集中の仕方の違いです。日本では出番直前は静かに集中している姿を見かけることが多いですが、カナダでは人それぞれ。舞台裏で直前まで冗談を飛ばして、急に舞台上で化ける人など様々です。公演後もみんなそれぞれ家に直ぐに帰り、役者仲間と飲みにいくと言うのも日本より少ないです。

あと、日本は演劇などのパフォーマンスアートの文化が一般的に浸透していないので、役者が活躍できる場が少ないです。北米だと、役者やダンサー、ミュージシャンなどが、企業や個人のイベントに呼ばれる機会も多いので、そこで報酬がもらえたり、スポンサーがついたり、政府の補助金があったりして、役者やアーティストが生計を立てる道を作りやすいですね。

役者としてショーに出演する安尾さん

これからの目標は?

いつかは自分が学んだことを日本に還元したいと思いますが、コロナで思う様に活動がまだできていないので、まずは舞台を中心に映像、声優業も平行して行なっていきたいと思います。また、俳優業以外にもカナダのエンタメ業の中で自分が何を出来るのか追求していきたいと思います。

実は今現在、日本人俳優を必要とするドラマのキャスティングのアシスタントとして働く機会をいただき、オーディションする側にたったりと、日々新たに学んでいるところです。そんな突然の巡り合わせも楽しみに歩んでいきたいと思います。

これから海外に出たい方にアドバイスを。

私の場合は自分がワクワクする方向へ進む事を大事にしてきました。思った通りに行かなかったりすることもももちろんありますが、それでも、人や仕事などいろんな巡り会いを楽しんでいます。

世の中にはどこにも書かれていない様な職業がいっぱい存在しますし、好きを追求し続ける中で、自分なりのポジションが生まれる事もあると思います。

「楽しい」と言う気持ちを大切に、ワクワクすることを追求して、そのワクワクが続く限り、どこまでも進み続けていってださい!

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