お話を聞いた人:
個人旅行ツアー会社経営・ツアーガイド 荒木大輔さん
カナダの旅行会社から独立し、個人旅行向けのツアー会社を設立。一人ひとりにあったカナダ旅行のサポートを行うとともに、オリジナルの現地ツアーを提供。現地の暮らしを体験できるようなユニークなツアーや、人情味あるパブツアーはネットの口コミでも人気となり、カナダ政府観光局も注目。
カナダに来たきっかけは?
大学生だった頃に、新潟県・越後湯沢のスキー学校でインストラクターをしていたんですが、その学校で見つけたスキー雑誌に、カナディアン・ロッキーにある有名ホテルのギフトショップのアルバイト求人が出ていたんです。
書いたこともない英文履歴書を作って応募してみたら、忘れかけていた数カ月後、採用をいただきました。当時はバブル崩壊後の不景気で、大学卒業後の就職も決まっていなかったので、これは何かのチャンスだと思い、思い切ってカナダに行く事にしました。
初めての海外で英語は?
自分の英語力の無さに衝撃を受けました(笑)気軽に来たんですが、英語力が一番壁でしたね。入国審査場でも、YesとOK、Thank Youくらいしか答えられない英語力です。
それでも、現地でカナダ人の若いお兄ちゃんとホテルのスタッフ寮で1年間一緒に住んでいました。全く会話がなりたたないので身振り手振りでコミュニケーションをとっていましたよ。
そこからなぜ旅行のお仕事に?
働いていたギフトショップはレイクルイーズという有名な湖のそばにあったんですが、ある日その湖に15人くらいのお客さんを連れていらっしゃった日本人ガイドさんがいました。
雄大な山々や氷河がなぜできたか、そこに生息する動物や植物の話など、とても興味深い博学な話でガイディングをされていて、お客さん全員の心を一人でわしづかみにしてたんです。それにとても感激して。その時にこんな仕事をしてみたいなって思ったんです。
それがきっかけで現地ガイドに?
そうです。その方に推薦いただいて、現地のツアーガイド会社に入りました。新人なのにワークビザも出していただいて。その会社で、カナディアンロッキーの観光ガイド、夏はハイキングガイド、冬はスキーガイドを3年ほどやりました。
もともと1年のワーホリ期間だけだったはずが、結局5年もカナダのロッキーで仕事をしました。
一度、日本に戻ったのはなぜ?
山の生活がお腹一杯になっちゃったんです(笑)
大学卒業してすぐカナダに来たので、日本での社会人経験をしてなかったので、日本でネクタイを締めて満員電車に乗る経験をしたかったんですよ。
それで、働いていたツアーガイドの本社に、退職して日本に帰国する事を伝えたら、名古屋支社に転属する話をいただきました。
日本で働いてみていかがでしたか?
がむしゃらに頑張って5年目には名古屋支店長をやらせていただけるようになりました。
実際に働いてみると、日本の社会には、日本独特なしがらみなどもあります。それは、仕事する上では仕方ないことなんですが。
出張で来るたびに、やっぱりカナダが自分の居場所だと感じるようになっていた頃、本社が新しい事業するということで声をかけていただき、バンクーバーに呼び戻していただきました。
カナダに戻ってからどんな事を?
本社で、新しいネット事業を任されることになりました。2008年の当時はまだ、ネットで今みたいに気軽に旅行を申し込む時代でなく、日本の大手旅行会社にカナダのツアーを販売していて、直接お客さんに売ることはありませんでした。
そこで、BtoCを広げるためのネット事業を立ち上げました。ちょうどバンクーバーでオリンピック開催も控えた時期で、徐々にインターネットでの知名度も上がっていきました。
そこから独立した経緯は?
そのネット事業に光が差し始めていた時に、東日本大震災が起きたんです。日本中がどん底に落ちて海外旅行者も大幅に減りました。そのため、会社もネット事業を閉鎖することに。
でも、実際にはネット事業の数字だけは上がってたんです。なぜなら旅行代理店を通さない個人旅行は増えつつあったんです。
その人たちの窓口を続けるために、会社がやらないなら自分でやろう!と、独立することにしました。
独立して作った会社ではどんな事を?
個人旅行の方を対象に、大手旅行会社さんではできない、一人ひとりのための旅行手配、現地でのガイドを行うほか、オリジナルのツアーを提供しています。
現地に暮らしているような体験ができる、お散歩ツアーや食べ歩きツアーが人気です。クラフトビールを飲み歩くパブツアーは、ネットの体験談や口コミで人気をいただきまして、カナダ観光局にも高い評価をいただいています。
リピーターも多いそうですね?
僕のツアーでは、公共交通機関を使って一緒に歩いて移動して、ビールも飲みます(笑)車で行く事もできるけれど、現地の友人に案内してもらうように、一緒に楽しみたいっていうお客さんも多くて。その方達が、また来てくれたり、家族や友人に紹介してくれたりします。
お客さん一人ひとり、この方はどんな事が好きかな?って考えて、おもてなしするのが好きなんです。大好きなカナダで、人に喜んでもらって、僕が好きな旅の仕事ができるのが楽しいです。
好きな事を仕事したいという方にアドバイスを。
僕は人を喜ばせたいという、おもてなし精神がもともとあって、それで旅行の仕事が好きになったんだと思います。それを発見するには色んな経験しなかったら分からなかったと思います。
好きな事を見つけるためには、色んな所に出て行き、色んな人に会ってみて、視野を広げてみてる。そうすれば、自分に合わないものは早く分かるし、ぱっと切り捨てる事もできる。
そういう経験や感覚を得ていく中で、自分が一番良いと感じることから、好きな仕事にたどり着いてくると思いますよ。